焼酎は、醸造酒である清酒とも違う黒麹および白麹を利用するという独自の発展をしてきました。
科学もまだまだ発達していない、感覚だけで酒を造る時代に職人たちの努力によって開発された薩摩の本格焼酎について、その七不思議シリーズとしてご紹介していきます。

今回はその第2弾、原料の風味、新酒の旨さ、食事にも合う醸造酒のような役割もできるというところにスポットを当ててご紹介します。

第1弾はこちらから → 本格焼酎の七不思議(1)

その3 原料の風味を持つ蒸留酒

本格焼酎ほど原料の個性が酒質に表現される蒸留酒はほかに見当たらない。ウィスキーは蒸留を2、3回行い、樽貯蔵することで、原料の麦の個性は失われたものになっていく。 ブランデーも同様で原料がブドウとは思えない。また中国の白酒は地中に掘った穴蔵の発酵槽に密閉して行う個体発酵なので、各種の微生物の影響を受ける強烈な香味の蒸留酒であり、決して原料の特性が生かされている蒸留酒とはいえない。

これに対し本格焼酎は、並行複発酵による高いアルコール生成によって、開放発酵であるにもかかわらず雑菌の影響が少なく、しかも一回蒸留なので多くの味の成分を含んでいる。したがって、いも焼酎・黒糖焼酎・麦焼酎・米焼酎と使用する原料由来の酒質を判別することができる。

昭和50年代になって、全国的に認知されてきた本格焼酎は、まず、いも焼酎からはじまり、そば・麦・米焼酎と原料に広がりがみられた。次に脚光を浴びるのは恐らく酒質であろう。味のある、旨いいも焼酎が再度浮揚することも夢ではない。
市場たえず循環しながら、また、競争しながら伸びて行くものと思われる。本格焼酎はわが国の伝統の蒸留酒でありながら、常に新しい酒である。 

その4 新酒が旨い蒸留酒

世界の蒸留酒で高い評価を受けているものは、基本的に、貯蔵されたものである。しかし、本格焼酎、特にいも焼酎は新焼酎が好んで飲まれる。
蒸留することを鹿児島では「煮る」、そして蒸留直後のことを「煮たて」と言って、新酒を珍重する風習が今でも残っている。これは清酒造りで新しい酒ができると、杉玉を門前に掲げた習わしが焼酎にも及んだのかも知れないが、実際に新焼酎は味が濃く旨い。

新焼酎は白濁しており、焼酎の旨味成分である高級脂肪酸エチル類が、新酒の味の粗さを十分に補ってくれるのである。時間が経過すると、この成分は空気や光によって油臭に変わり、酒質を劣化させることから、今では年間を通じ酒質が変化しないように大部分を濾過して油分を除去した本格焼酎が出荷されるようになっている。しかし、今でも各蔵で新酒の出来栄えを競っているのは新酒に対する愛飲家の要望に応えるためなのである。
他の蒸留酒にない本格焼酎の味わいである。 

その5 醸造酒のように飲める蒸留酒

鹿児島では気候のせいか旨い清酒ができなかった。ならばと旨い本格焼酎を造るべく、清酒造りや沖縄の泡盛等周辺の情報を取り入れながら焼酎造りをしたようである。普通、醸造酒の清酒・ワインは料理を食べながら飲まれるが、アルコール度の高い蒸留酒はウィスキーでも白酒でもどちらかといえば食前酒である。これに対して本格焼酎は蒸留酒の仲間なのに、アルコール分を水で薄めて、しかもお燗をして醸造酒のように食事をしながら飲まれる酒なのである。いつごろからこのような飲み方をするようになったのか分からない、というほど古くからの鹿児島で一般的な飲み方だった。現在はお湯割り(お燗の簡便法)が本格焼酎の飲み方の定番になっているが、黒ヂョカ・黒ヂョコでゆったり飲む薩摩の本格的な飲酒文化を広めたいものである。

出典
鹿児島県本格焼酎技術研究会『鹿児島の本格焼酎』(春苑堂出版、2000年)

次回はいよいよ、最終回です。
更新をお楽しみに!

2012年9月4日 火曜日 掲載

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